医療安全学を探究する滋慶医療科学大学院大学 5期生の学位記授与式が行なわれました。

式の終了後、大学院前で記念撮影

式の終了後、大学院前で記念撮影

 大学院として日本で唯一、“医療の質と安全”を研究テーマとする滋慶医療科学大学院大学の「平成28年度学位記授与式」が3月19日(日)、JR新大阪駅前の同大学院大学で行なわれました。

 この日の学位記授与式には、修士号を授与される5期生21名のほか、教授陣や関係各方面のご来賓の先生方など約100名が出席しました。告辞に立った武田裕学長は、中には家庭を持ちながら、看護師や臨床工学技士、病院理事長秘書などの仕事をこなしつつ、学業に邁進してきた修了生に向って、まず「本当によくがんばられたと思います」とねぎらいの言葉をかけました。
 
 
 
 

武田学長 地域の医療安全課題に挑戦して欲しいと式辞


 武田学長は、少子高齢社会の中で今後、医療を中心に介護や福祉との連携が重視され、「見守る」「寄り添う」新しい社会を創っていかなければならないと述べた上、「病院の医療安全がまだ完全と言えない中、地域で完結するような患者、利用者の安全安心をどうつくっていくかが課題です。皆さんにはぜひこれに取り組んでいただきたい」と訴えました。
 また武田学長は、医療安全に対する考え方が、これまでの「医療事故に学ぶ」から、良い仕事や良いチームワークを評価する「ベストプラクティスによって医療安全に備える」という考え方に変化しつつあると示唆。「これらの2つのパラダイム変化に挑戦し、地域完結型の医療安全に取り組んでいただきたい」と、医療安全管理学の修士課程を修めた一人ひとりに学位記を授与しました。
  • 式辞を述べる武田裕学長
  • 理事長としてねぎらいの言葉を述べる浮舟邦彦総長 理事長としてねぎらいの言葉を述べる浮舟邦彦総長

浮舟総長 「数少ないパイオニアとして医療安全分野の開拓を」


 次いで、学校法人大阪滋慶学園を代表して、理事長でもある浮舟邦彦総長が「仕事や家庭をもちながら学業を成し遂げたその思いは、一人ひとりのキャリアを作っていく上で大きな支えになるでしょう。この医療安全の分野は日本では研究者の少ないジャンルであり、皆さんはパイオニアとしてこの分野を開拓し広げていってください」と述べました。
 さらに、浮舟総長は、「これからは、職種間連携はもちろんのこと、医療と福祉、産官学の連携、ネットワークが大きなキーワードになります。皆様が取り組んでこられた医療の安全と質の研究が益々、社会から必要とされてきます。安全については、どの業界でも重要な経営マターとなっており、そのマネージメントは益々重要になってきます」と述べ、今後も同大学院が主催する医療安全実践教育研究会や、武田学長が座長を務める「医療の質と安全学会」などに参加するとともに、継続して研究を行なって、社会に貢献して欲しいと言葉を贈りました。

国内外の来賓ご代表からお祝いの言葉


大阪府看護協会会長の高橋様

 来賓の皆様からもご祝辞をいただきました。
 大阪府看護協会会長の高橋弘枝様からは、ドラッガー博士の言葉を紹介し、「知識と実践が一体となるように活動を行い、学位記を授与されて目標を達成した今こそ、何をなすべきかを見直してください。所属している地域や施設において、何が求められているかを考えて、チームを作って実践していただきたい」と、激励の言葉をいただきました。

 

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校のコーマック学部長

 また、提携校のカリフォルニア州立大学ロングビーチ校理学療法士学部学部長のジョディ・コーマック博士からは、「皆さんは患者の権利を代表する医療職者です。そのミッションはヘルスケア活動全般にわたるリスク管理を通して、患者の皆様の安全を高め、価値を最大化することです。情報の共有と、多職種の専門職が集まる環境下でのリーダーシップを大事にして下さい」と、励ましの言葉を頂きました。

 

バングラデシュのホサイン学長

 新たな提携校となったバングラデシュのイーストウェストメディカルカレッジ&ホスピタルから、モアゼム・ホサイン学長をはじめ、マネージング・ディレクターのウルファト・ジャハン・ムーン氏と輸血学部准教授のカジ・ナウシャッド・ホサイン氏に参加していただきました。名古屋大学医学部で博士号を取得したホサイン学長は、「皆さんが、健康問題や安全性、運営効率に貢献していかれることを信じています。安全に関するキーパーソンとして尽力する皆さんの専門知識、医療サービス、医療機器の取り扱いこそが患者の健康と福祉だけではなく、組織全体にとっても良い影響を及ぼすでしょう。そして世界の様々な機関で活躍される人物になっていかれることを信じています」とバングラデシュへの協力も訴えました。


埼玉からの遠距離通学で修士論文を完成させた看護師の野々村さんが代表謝辞


5期生21名を代表して学位記授与式で謝辞を述べる代表の野々村さん。埼玉の病院に勤めながら医療安全学の修士号を取得した

 このあと、来賓の大阪府臨床工学技士会の村中秀樹会長や京都府理学療法士会の並河茂会長らの紹介と、日本医師会の横倉義武会長や日本看護協会の坂本すが会長ら各団体の代表者をはじめ、修了生の勤務先の病院などからの祝電の披露が行なわれました。

 最後に修了生を代表して埼玉県の病院で働きながら新幹線を使った遠距離通学で修士論文を仕上げた野々村ゆかりさんが謝辞を述べました。野々村さんは、「志の高い仲間と出会って、共に学び、悩み、時に笑い、なによりも思考するという大事な時間を持つことができました。職種によって問題の捉え方が違う多くの医療職と共にぶつかり合いながらも、一つのものを作り上げる学びは、他では経験することは出来ません。ここで得られた経験は、今後、医療現場でリーダーとなるために不可欠な能力だと思います。この大学院で学んだ誇りを胸に凛とした姿勢で突き進んでいきます」と決意を述べ、素晴しい頑張りに対して、参列者から大きな拍手を浴びていました。


中国留学生の楊さんも修士号を取得 「いつか中国の医療安全にも貢献したい」


中国人として初の医療安全学修士となった楊さん

 修了生の中には中国から留学し、大阪の公立病院で臨床工学技士として働く楊成棟さんもいました。楊さんは、2007年に中国の上海医専大学から大阪ハイテクノロジー専門学校日本語学科に交換留学生として留学。その後、同専門学校の臨床工学技士科で学んだあと、日本の国家試験で臨床工学技士の国家資格を取得し、卒業後は大阪府下の民間病院に勤務。その後、滋慶医療科学大学院大学で学ぶために、大阪府立急性期総合医療センターに移り、昼間働きながら平日の夜と土曜日に大学院に通学、日本語での論文作成という難題に挑戦しながら、めでたく修士号を取得し、この日の学位記授与式に出席しました。

 「医療機器の安全管理体制の中日比較研究~医用電気機器及び病院電気設備の安全基準の中日比較を通して~」の論文で修士号を取得した楊さんは、「今の病院は規模が大きすぎるので、全体の医療安全管理というのはまだ難しいです。来年度からは京都の病院にかわり、そこで臨床工学の部門だけではなく、病院全体の医療機器についての安全管理も担当できればと思っています。当分は日本で学ぶことが多いので、十分なスキルと知識を身につけて、アメリカ式とは違う日本型の医療安全で中国に貢献したいと考えています」と目を輝かせていました。

学校法人大阪滋慶学園の卒業式 医療・福祉を支える人材として巣立つ

近藤学校長から卒業証書と専門士称号を授与される大阪ハイテクノロジー専門学校総代の﨑さんと、大阪保健福祉専門学校総代の今徳さん

近藤学校長から卒業証書と専門士称号を授与される大阪ハイテクノロジー専門学校総代の﨑さんと、大阪保健福祉専門学校総代の今徳さん

 看護師や臨床工学技士、柔道整復師に社会福祉士…。4年制の高度専門士コースを含め医療や福祉の業界と連携して職業人教育を進め、文部科学省が高度な職業教育とみなす「職業実践専門課程」の認定を受けている学校法人大阪滋慶学園の専門学校5校の卒業式が3月8日、9日の2日間、大阪市中央区のホテルニューオータニ大阪で執り行われました。

 今年、創立30年を迎える大阪滋慶学園では、すでに2万5千人を超える卒業生が医療や福祉の世界などで活躍しています。3月8日(水)には、大阪医療技術学園専門学校、大阪医療福祉専門学校、大阪医療看護専門学校の3校合同卒業式が、翌3月9日(木)には、大阪ハイテクノロジー専門学校と大阪保健福祉専門学校の2校合同卒業式が行なわれました。



大阪ハイテクノロジー専門学校と大阪保健福祉専門学校の2校合同卒業式


 9日の2校合同卒業式では、スーツ姿や着物と袴姿に身なりを整えた学生が、医療、福祉、健康スポーツなどの専門職として、大勢の家族や来賓の方々の祝福を受けて社会に巣立っていきました。この日、“最後の授業”としての卒業式に出席した学生たちの中には31名の留学生も含まれ、これから発表される国家試験の朗報を待って、それぞれの職場に向います。

学校総代の﨑さんと今徳さんに卒業証書と専門士称号を授与


 まず最初に卒業証書と専門士・高度専門士称号の授与が行なわれました。両校の学校総代として、大阪ハイテクノロジー専門学校の﨑健祐さん(臨床工学技士科)と、大阪保健福祉専門学校の今徳千諒さん(看護学科)の2人が壇上に上り、大阪大学名誉教授の近藤雅臣学校長(医学博士)から、「よく頑張りました」と、「卒業証書」と「専門士称号」が授与されました。

近藤学校長 「一日一日を大切に」


 近藤学校長は「皆さんは豊かで健康な社会を構築するために奉仕する職業に就かれます。人の一生は、一日一日を大事に最高の日として過ごすという連続があって、はじめて素晴らしい人生を送ることが出来るのです。長い人生で誰しもなんらかの壁にぶつかるでしょう。しかし、壁はそれをぶち破って人生を切り拓く人の前にしか現れません。壁が現れるのは、一生懸命頑張っている証拠です。だから、あわてずにじっくりと工夫をこらし、様々な手立てを駆使して、壁を乗り越えることが大切です。自分がして欲しいことを相手にも行なう友愛の気持ちを大事にして誇りを胸に素晴しい人生を送って下さい」と言葉を贈りました。
  • 職業人としての心構えを説く浮舟総長
  • 式辞を述べる近藤学校長

浮舟総長 「医療と福祉の連携がキーワード」


 引き続き、同学園理事長でもある滋慶学園グループの浮舟邦彦総長から祝福の言葉が贈られました。浮舟総長は「本日はプロを目指してのスタートの日です。プロが成長していくには原則があるように思います。まずプロは仕事を通して成長するということです。ですから仕事を大切にし、職場を大切にして下さい。スペシャリストとしての基本を大切にして、その仕事を完全にマスターするところまで、自らを高めて下さい。周辺の知識や資格にも興味を持って、学び続けて下さい。これから皆さんの職場では、多職間連携、医療と福祉の連携がキーワードになってきます。人と人をつなぐマネージメントにも関心を持って下さい。そして自信を持って、自分の仕事を大切に、仕事を楽しみながら、自分の道を歩んで行って下さい」と職業人として、人間としての在り方にふれ、卒業生の船出を祝福しました。

米国のグレイズ・ハーバー・カレッジのミンクラー学長から祝辞


グレイズ・ハーバー・カレッジのミンクラー学長の祝辞

 海外提携校からご臨席いただいた、米ワシントン州にある公立の医療福祉系のコミュニティ・カレッジとして知られるグレイズ・ハーバー・カレッジ学長のジェームズ・ミンクラー博士と、上海中医薬大学の呉志新副院長から祝辞が贈られました。
 17年前から大阪滋慶学園と交流をもつミンクラー学長は、今秋からヘルスケアと関連するテクノロジー分野で新たに始まる大阪滋慶学園との医療のパートナーシップについての期待を述べた後、「他者を助けるという医療職者の道を選んだ皆様の賢明さを賞賛したいと思います。日米両国において、歴史上、今ほどヘルスケアに対する需要が高まっている時代はありません。多くのやりがいのある専門分野があるということです。回りを見回せば、医療職者として、十分な準備が整っているクラスメイトがおり、あなたもその一人なのです。だから、これからの職業人生においてあなたはきっと成功するでしょう。尊敬される医療職者、テクノロジストとなるこの卒業の日をお祝いします」と、哲学者らしい表現を交えて祝福の言葉を贈りました。


中国・上海中医薬大学の呉副院長から祝辞


上海中医薬大学の呉副院長の祝辞

 中国からは、上海中医薬大学から鍼灸と看護の2名の副院長が臨席されました。代表して呉志新副院長が祝辞を述べました。呉院長は「『夢~未来に羽ばたけ~』と本日のプログラムにあるように、皆さんは未来に羽ばたいて行かれます。2004年に開始した両校の交流は、合作教育の推進と共に、理解と信頼を深め、多くの成果を挙げてきました。そして今後も広げていけると期待されています。
 昨年9月には、貴校と協力し、本学が主催して第2回アジア臨床フォーラムを開催しました。中国の『論語』には、“友あり遠方より来たり、また楽しからずや”という名言があります。機会があれば、ぜひ本学へおいで下さい」と卒業への祝辞を述べました。


 このあと、地方独立行政法人大阪府立病院機構の遠山正彌理事長や医療機器メーカー、ニプロ株式会社の佐野嘉彦社長ら各界からのご来賓の紹介と、国立研究開発法人国立循環器病研究センターの小川久雄理事長や医療秘書教育全国協議会の日野原重明会長ら各方面から頂いた、卒業生の前途を祝福する多数の祝電が披露されました。

校長賞に小川さんと上畑さん 理事長賞に永野さんと大塚さん


浮舟総長から理事長賞を贈られる大塚さん

 式の途中には、各賞表彰が行われ、校長賞が優秀な成績を修めた大阪ハイテクノロジー専門学校臨床工学技士専攻科の小川良太さんと、大阪保健福祉専門学校社会福祉科の上畑真弓さんに贈られたのをはじめ、大阪府教育長賞が大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科の迫愛恵さんと大阪保健福祉専門学校医療秘書・情報科の吉村菜緒美さんに、理事長賞が大阪ハイテクノロジー専門学校柔道整復スポーツ学科の永野みきみさんと、大阪保健福祉専門学校介護福祉科の大塚麻由さんにそれぞれ贈られました。


 また、「人工心肺装置操作時における灌流量自動調整システムの作成」の研究に取り組んだ大阪ハイテクノロジー専門学校の臨床工学技士科チームと、「VR機器を使用した回想法の効果について~認知症高齢者を対象とした写真とVRによる回想効果の比較調査から~」の研究テーマに取り組んだ大阪保健福祉専門学校介護福祉科と大阪ハイテクノロジー専門学校生命工学技術科の混成チームにJESC(滋慶教育科学研究所)奨励賞が贈られました。

日刊工業新聞社賞とフジサンケイビジネスアイ賞も


  • 日刊工業新聞社の竹本大阪支社長から賞状と記念品を贈られる乾さんと相川さん
  • フジサンケイビジネスアイの両金大阪代表から賞状と記念品を贈られる山口さんと蛭子さん
 さらに皆勤賞や精勤賞のほか、日刊工業新聞社賞が大阪ハイテクノロジー専門学校の乾紘さんら「エナジードリンクが敏捷性と集中力に及ぼす影響について」の研究を行なった柔道整復スポーツ学科チームと、大阪保健福祉専門学校の相川貴俊さんら介護福祉科チームに、またフジサンケイビジネスアイ賞が「アミノ酸トランスポーターAsc2の未同定重鎖サブユニットの探索」研究に取り組んだ大阪ハイテクノロジー専門学校生命工学技術科の山口真奈美さんと、大阪保健福祉専門学校の蛭子萌子さんら看護学科チームにそれぞれの新聞社の大阪代表から贈られたほか、大阪府専修学校各種学校連合会賞など各業界団体からの各賞が優秀な成績を修めた学生やチームに贈られました。

学生の謝辞に会場が感動に包まれました


卒業生一同を代表して謝辞を述べる大阪ハイテクノロジー専門学校の濱﨑さんと大阪保健福祉専門学校の東さん(写真中央部の二人)

 最後に、大阪ハイテクノロジー専門学校柔道整復師学科の濱﨑綾乃さんと大阪保健福祉専門学校介護福祉科の東和輝さんが謝辞を述べ、濱﨑さんは「一番の思い出は、上海中医薬大学での日本では出来ない臨床実習で、命の尊さを感じることができました。私にとってはかけがえのない学校生活でした」と述べ、東さんは「素晴しい仲間に囲まれ幸せな学校生活でした。この学校で得たものを生涯大切にしていきたい」とそれぞれ感謝の言葉を伝えました。また、苦労しながら専門学校に通わせてくれたお父さんやお母さんに感謝の言葉を伝えましたが、苦しかったことや楽しかったことなど、その時々のシーンを思い起こしたのか、感極まってのどを詰まらせる場面もあり、式場に感動を呼んでいました。


ゴスペルによる祝歌「ひまわりの約束」で卒業式終える


 姉妹校の大阪スクールオブミュージック専門学校の卒業生と放送芸術学院専門学校の在校生で構成するゴスペルアンサンブル「ソウルマティックス」による祝歌「ひまわりの約束」が贈られ、卒業生たちは拍手に送られて、謝恩会の会場に向いました。
  • 家族に見送られて社会人へ
  • クラスメイトと記念の写真におさまる卒業生

 
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