「看護と介護の連携授業」をスタート
〜豊田副学校長にインタビュー

2014.05.15

「看護と介護の連携授業」をスタート~大阪保健福祉専門学校
―先進的取り組みで、杉浦財団から活動を支援―

 高齢化社会が進む中で、医療・看護と介護・福祉の両分野の発展・あり方は、重要な社会的問題となっています。なかでも、看護と介護の領域は今後ますます「一体化」の方向に進んでいくとみられています。地域医療・福祉を実現していくうえで、病院と介護施設は分担(分業)から連携(協業)の方向にあり、今後増えていく在宅医療における“看護・介護ケアの処方策”など、課題は山積しています。

 こうした課題に向けて、大阪保健福祉専門学校は、かねてから「看護と介護の連携授業」について準備を進めてきましたが、5月中旬から本格的に教育活動をスタート。学校教育では先進的な取り組みとなり、杉浦地域医療振興財団(愛知県)から助成活動の支援を受けました。そこで、先導役の豊田百合子副学校長に、連携授業の目的など、語っていただきました。


―高齢化社会~介護の重要性に着目―

―看護と介護の連携は高齢化社会の大きな課題で、時代に対応したテーマとも言えます。連携授業に取り組むきっかけ、狙い・目的からお話ください。

 「2012年7月に本校に着任(前職は大阪府看護協会会長)したとき、保健、医療、介護など9学科があり、看護と特に介護に着目しました。これだけの学科は宝物のように見えましたが、果たして横のつながりは、ということを意識して、『看護と介護の連携教育』を思い立ったのが、きっかけです」

 「社会的背景として、高齢化社会に直面して、要介護者が増えていきます。例えば身近な問題として、年老いた親が(老人ホームなどの)部屋でポツリとしている姿を想像しますと、寂しくない環境をつくりだすのは、非常に大事なことだと感じました。それを実現するには、看護と介護の連携が不可欠です」


―相互理解が大切~看護職と介護職がスクラム―

―看護と介護の現場での職務上、共通することと相違点は何でしょうか。

 「共通点は一言すれば、一人ひとりの人生、生活を見守るわけで、『個人の生命の尊厳』です。これは本校の教育の基本理念でもあります。相違点については、看護は医療のアセスメント、判断する必要があり、どこが悪いか問題点思考型で、時には緊急を要します。介護は長い目で見て、食事、歩行、入浴、排泄など日常生活を円滑に支援するわけで、自ずと職業文化、習慣、価値観の違いが生じます」

 「その違いをお互いに理解し合うことが大切なのです。違いを理解したうえで、医療依存度の高い要介護者に対して、看護職と介護職がスクラムを組んで協働することによって、患者さんの生活のフィールドを温かく見守ることができます」


―チームでケアを実践~人づくり・教育がカギ―

―医療技術の進歩によって平均寿命が延びて、健康寿命との期間差が長くなる傾向にあります。やむなく障害をもち、介護を必要とする人口が増えますね。

 「だからこそ、看護と介護を含めての“多職種連携の重要性”が高まっています。医療の質を高め、患者さんの安全・安心を確保するには、看護職と介護職が連携して、チームでケアを実践していくことが大切です。そのためには双方の領域を理解して、現場で実践できる人材を育てることが必要です。人のケアを人がするわけですから、何においても人づくり、教育です」


―看護と介護~共通認識を深める―

―連携授業を始めるに当たって、両分野をカバーして教育する、バランス感覚を有する教員、指導者の役割が重要ですね。この間にどのように準備をされましたか。

 「2012年12月から、看護系と介護福祉系の教員全員を対象に、学習会を開催。看護過程と介護過程の共通点と相違点を洗い出し、連携する上での課題、必要な要件を徹底的に討議するなど、共通認識を深めるようにしました。その上で外部講師を招いての勉強会、病院、施設の協力を得て、現場研修も実施しました。結果、教員の意識の変化につながりました」


―地域とも連携~滋慶モデルを構築―

―授業のテーマ、今後の進め方を教えてください。

 「授業は看護学科2年生80名、介護福祉科2年生80名が対象です。主なテーマは、チーム医療の意義~看護と介護の連携の重要性、連携のために必要なチームマネジメントスキル、などです。授業では、講義とともに、事例をもとにグループワークなど討議、発表も行います」

 「教材作りも進めています。できれば1冊のテキストに仕上げたい。看護、介護、それぞれの事例研究も行います。また学生の変化もアンケート調査で明らかにしていきたい。授業の後には、評価も大事ですから。学生には来年2月の卒業研究の課題テーマにもしたい。臨床実践の場として、実態調査など地域の施設とも連携していきたい。果敢に取り組んで、看護・介護連携の“滋慶モデル”を作り上げたいですね」


 大阪滋慶学園グループは6専門学校のもと、医療、介護、保健、福祉人材の職業人教育では約30年、3万人を超える人材を育てています。こうした実績とともに、医療の質・安全の向上を目指して、多職種連携教育に注力している「滋慶医療科学大学院大学」があります。今回の「看護と介護の連携教育」においても、こうした総合力を発揮する機会となります。

 
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